また“ショボい滝”だったらどうしよう、と思いながら歩いていた。なにしろ、ついさっき寄った 神秘的だの大迫力だの騒がれている十二滝が、あまりにも貧相で落胆したばかりだからだ。
しかし、「めん滝」との看板が出ていれば、……まあ、 見ておこうかという気にもなる。

獣道を抜けた瞬間、水の音が一段深くなる。
目の前に現れたのは、小さいのに、妙に“圧”のある滝だった。
あまりにも気持ちが良い場所だったのでしばらく佇んでいた。滝を堪能して清々しくなった後に知った、地元の人の間に伝わる怖い言い伝え。
実はこの滝、恐ろしい主が棲んでいると言われている。

「一本だたら」という妖怪。一つ目で一本足、牙だらけの口。
……なのに、なぜか少し可愛いと思ってしまう。
自分の感覚が信用できなくなる。
果無って変な地名だな、とは思っていた。
どうやらこのあたりでは、12月20日の「果ての二十日」に妖怪が旅人を襲うと言われているらしい。
——だから「果無」。
旅人は襲うけれども……集落の人間は、例外なのだろうか。

また、谷を汚したり、不敬なことをすると、猛烈な祟りがあると恐れられていた。現に被害者もいるらしい。
村人たちの信仰を馬鹿にし、滝を汚した若者・山次は、後に滝壺で死体となって見つかった。
——その出来事以来、この谷の戒めは、より強く語り継がれるようになったという。
十津川周辺の滝には、「主が怒ると天候が急変する」という言い伝えも多い。
いまのところ、天候は穏やかで、体にも異変はない。
——どうやら私は、まだ“食われる側”には分類されていないらしい。
……少なくとも、今日は。
明日のことは、知らない。

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