富雄丸山古墳へ――巨大な蛇行剣に興奮し、最後は海洋散骨を決意した

富雄丸山古墳へ――巨大な蛇行剣に興奮し、最後は海洋散骨を決意した

🦌 奈良県の史跡

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直径109メートル。日本最大の円墳、富雄丸山古墳。
そこから出てきたのは、2メートル37センチもある蛇行剣に、前例のない盾形の銅鏡。出土品だけ聞けば、現地もさぞ圧倒的なのだろうと思う。

ところが、実際に行ってみると――地味だった。

富雄丸山古墳に駐車場はない。徒歩数分の道の駅「クロスウェイなかまち」に駐車するらしい。ついついそこで買物をしてしまった。珍しいものもいろいろある。結果、観光地の駐車代をこえるくらいのお金を使っていた。無料駐車場として使うには強靭な意志が必要だ。

演出具合もバッチリ!道路には「富雄丸山古墳はこちら 直径109メートル国内最大の円墳」と記されてあり、進むにつれ、あと300メートル、100メートル、50メートルと距離が更新して記されている。この段々近づいて行く感じ、妙に興奮する。

階段を登り公園に入ると、左手にはグラウンド。右手の木々が生い茂る一帯は立入禁止になっている。その脇の細い階段を上ると、金網越しに富雄丸山古墳と丸山第2・3号墳を見ることができる。

歴史作家の河合敦氏の講演によると、古墳頂上の中心埋葬施設はすでに盗掘されており、その盗掘品をある人物が京都国立博物館へ持ち込み、寄贈したという。鉄製の斧や刀子、鎌などを石で忠実に模した「石製模造品」で、古墳時代前期末頃の祭祀具とされる。
盗掘品が、巡り巡って博物館に寄贈される。なんとも妙な顛末である。

他にも、碧玉製腕飾、琴柱形の石製品などなども出土している。

富雄丸山古墳から出土し大騒ぎになった蛇行剣。しかし蛇行剣そのものは現段階で日本国内各地から85本も出土しており、そんな珍しいものではない。だが富雄丸山の一本は別格だった。長さ2メートル37センチ。古代東アジア最大で、実用品とは考えにくい。 1メートルを超える長さの物は富雄丸山古墳以外からは今のところ見つかっていない。

河合敦氏の講演によると、この蛇行剣は実戦で自在に振り回すような代物ではなかったらしい。怪力の戦士が巨大剣を振り回していた――という話ではなさそうだ。一体、何のために。誰のために。これほど巨大な剣を作ったのか。そしてこの蛇行剣は、石上神宮に伝わる七支刀とほぼ同時期に作られたと考えられている。

刀匠の河内國平氏によると、蛇行状に曲げること自体は簡単なのだという。問題は長さだ。2メートル37センチ。こんなに長いものを、一体どうやって作ったのか。河内氏も頭を悩ませていた。

蛇行剣の下からは、盾のような形をした鼉龍文盾形銅鏡も発見された。これも前代未聞で唯一無二の形。長さ約64センチ、幅約31センチ。表面には神像や霊獣などを組み合わせた鼉龍文が表されている。

更に不思議なのが、北東側の造出しにある未盗掘の埋葬施設では、被葬者の足元側にあたる場所から、大型の銅鏡が3枚重ねて置かれた状態で見つかった。河合敦氏によると、銅鏡は10センチ前後のものが一般的だという。ところが、富雄丸山古墳から出土した3枚は、いずれも20センチ前後。通常の倍ほどの大きさだった。しかもその3枚の銅鏡の制作年代が大きく異なり、その内1枚は、制作から副葬まで最大400年もの差がある。謎で満ちている。

さて、富雄丸山古墳を実見すると、「発掘調査中につき立入禁止」の看板が出ている。更に柵の扉はチェーンを使って簡単にはあかないようにしてあった。ただ柵が低いし、進入禁止の槍のようなとげとげも柵の上についていない。ちょっとよじ登れば簡単に飛び越えられる防御の仕方。

だからだろうか、「防犯カメラ設置」との看板が有った。ところが肝心の防犯カメラは、見るも無残な姿になっていた。内部が、まるで切腹でもしたかのように丸見えである。これでは防犯カメラを防犯するカメラが必要だ。

富雄丸山古墳を説明する丁寧なしっかりした内容の看板が立っている。出土した時の写真入りである。

出土品がすごいので期待して行ったが、実際は草木に囲まれた中にある古墳。しかも立入禁止。散策自体はすぐ終わった。2メートル37センチの蛇行剣を生んだ場所とは思えないほど、現地は静かで拍子抜けする。

出土物から当時の社会や信仰や技術がわかるのはとても興味深い。現に出土物に興奮してこうして富雄丸山古墳を見に来た。

考古学という名をつければ、それは学術調査になる。
けれど、埋葬された側から見ればどうだろう。
千数百年後の人間が墓を開き、骨や副葬品を取り出し、年代を測り、展示している。
永遠に安らかに眠ってほしいと願って埋葬した人たちからすれば、これは立派な墓荒らしではないのか。

知識を得る代償として、誰かの想いを踏みにじっているのかもしれない。そう考えると、酷いことをしているなと胸が痛くなる。

それでも私は出土品を見たい。知りたい。
酷いことをしているなと思いながら、やめられない。

私は死後、海洋散骨をしてもらうつもりだ。未来永劫、墓を荒らされることもなく安心である。

Googleマップ:富雄丸山古墳
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