封鎖された神の処方箋

封鎖された神の処方箋

🦌 奈良県の史跡

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西大寺の道路向かいに、突如現れる閉鎖空間。しかも、そこにあるのは小さな神社だ。 えっなんで!?っと一瞬頭がバグる。細かい網目でガチ侵入不可なフェンスで周囲を囲い、竹を横一文字に置き侵入の意思を強烈に表現。わずかな隙間すらロープで封じられている。 絶対入れない!と確たる雰囲気を周囲に放っている。

封鎖された先に見えるのは小さな社。一寸法師のモデルになった小彦名命(石落神)が祭神の石落神社だ。手入れが行き届いていて神聖な感じがする境内、と、立ち入り禁止とのこのギャップ。大切すぎての処置なのだろう。

一寸の大きさの人が実際にいるかは別として、鎌倉時代に西大寺を復興した叡尊が三輪から勧請して小彦名命を祀った。小彦名命は医薬の神であり、三輪山の神(大物主命)と協力して国づくりをした神だ。なんでも叡尊は、小彦名命から”秘薬”として、豊心丹の製法を授かったという。

さて、豊心丹って何の薬か、というと、下痢、頭痛、吐血、めまい、二日酔い…。豊心丹のすごさはこんなのでは終わらない。なにしろ、”万病に効く薬”として叡尊は小彦名命から薬の製法を授かったというのだ。万病に効くとは、まるでRPGの魔法アイテムみたいな感じだ。そして、万病に効く、と、そう信じられていた。

そして、豊心丹の成分は、現代でも超高値で取引される貴重な生薬が配合されていた記録がある。その正確な配合比率は門外不出の秘伝だった。強心作用や解毒作用、精神不安にも効く、とされ、「イザ!という時の神頼み」そのままの万病薬だったのだ。

果たして万病に効く薬というのが存在するのか‥‥もしかしたらこんなことも関係しているのかもしれない。小彦名命という医薬・病気平癒の神様から叡尊に授けられた薬、という有難いお話。
そして豊心丹は、「呪薬」とも呼ばれていた。「呪」というと恐ろしいが、「まじない」という意味でもある。当時、このあたりでは、祈りを捧げながら薬をつくる法会が行われていた。神様から教わった万病薬を、さらに祈りを捧げながら製造する、もうそれだけで効き目抜群感で満たされる。小難しい理屈など考えなければ。

豊心丹は日本最古級の売薬としても知られている。昭和17年ごろまではここ西大寺で製造販売されていた。そのパッケージもまるで神札みたいなデザインで、「三輪神授」「叡尊伝授」など神がかった効き目が在りそうな文字がかかれ、持っているだけで安心するようなものだったらしい。

江戸時代にはあまりにも有名過ぎて「豊心丹(ほうしんたん)で西大寺(さいだいじ)」という言葉まで生まれたほど。豊心=ほうしん=放心 西大寺=さいだいじ=妻大事 つまり「のろまな男は妻に頭が上がらない」という意味だ。


しかし、叡尊のやり口は実に上手い巧妙なマーケティング手法である。お坊さんっていうよりも、起業家。そしてぶっ飛んでいるのがそれを慈善事業に全振りしていること。慈善事業を継続するためにお金を稼ぐ事業家。

叡尊は35歳で西大寺に入寺した。しかし社会情勢から一時避難。38歳で西大寺に還住してからは驚異的な救済活動を開始する。

貴族のものだった仏教を「正しく生きれば誰もが救われる」と救済対象を非人にまで広げ9万7千人以上の人に授戒を行う。 社会から排除されていた窮民やハンセン病患者を般若寺に集め、食事や薬や沐浴、金銭配布などを行う、それにより救済された人は3000人~5000人に及ぶという。


他にも、難所だった宇治川に橋をかけ直したり、1000か所以上の漁場や猟場を殺生禁止とし道具を焼却するなどもした。それにより、殺生するしか生きる術がなかった人たちを解放し福祉事業などに転職させた。

これだけの活動をするには莫大な資金が必要だ。叡尊はそれを貴族からの寄付と、豊心丹を売った利益で捻出していた。


封鎖された石落神社の前に立った時、
そこにはただの小さな社以上のものがあった。

神から授かったと信じられた薬。
祈りと共に作られた呪薬。
そして、それを信じた人々。

豊心丹が本当に万病に効いたのかどうかは、今となってはわからない。

だが一つ確かなのは、
それが多くの人の「救い」になっていたということだ。

薬の効き目は、成分だけで決まるわけではない。

信じること。
祈ること。
そして、自分は救われるのだと確信すること。

それ自体が、すでに一つの治療だったのかもしれない。

最近、私は水を飲むたびに思う。

これはただの水ではない。
これは自分を最高の状態に変えるエリクサーだと。

石落神社の前を通ってから始めた、ささやかなまじない。

効いているかどうかは、まだわからない。

だが少なくとも、
今日も私は、少しだけ強い。

Googleマップ:石落神社
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