これは演出か、それとも空白か──北野天満宮イベントの違和感

これは演出か、それとも空白か──北野天満宮イベントの違和感

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北野天満宮で約3ケ月半にわたって開催中の『雪月花の三庭苑・梅苑「花の庭」 』と『イマーシブシアター 〈花宵の大茶会〉』に行ってみた。普段自分では行かない系のものなのでなにか自分の幅が広がるかもしれないと思い誘いにのってみたのだ。

2,800円の前売りチケットを提示し梅苑 に入ると、梅お菓子と梅粉茶がプレゼントされる。お茶にすら砂糖が入っていたので私はパスしたが、「不味い!なにこれ!」という人と「美味しい♪」という人で評価が二分しているお菓子だった。

「花の庭」というイベントスペース。梅苑の木に複数の透明小物を付着させた長い糸を方々につるしてあるだけだった。えっこれで2,800円? 値段と体験が釣り合わない。曇り空の日中では単なる物体が木にぶら下がっているだけである。せめて晴れていたらキラキラし、マシになるのかもしれない。夜になったら地面に置いてあるライトで光り綺麗になるのかな、とそこに期待した。

緩い坂を数秒のぼると、戸が開け放たれた梅交軒という一軒の茶室がある。茶室一室全体を花で飾ったアート。しかし、あぁそう、って感じだった。ド派手でケバい、ちょっと下品にすら私には思えた。全体を見るとなんじゃこりゃって感じだが、写真の撮り方によっては映えて見える。

イマーシブシアター は、プレミアムチケットで15,000円、一般チケット10,000円というなかなかの金額。透明ケースにスマホを入れさせられ首からぶら下げる。他荷物はロッカーに施錠させられた。そして、おみくじをひかされる。くじ結果で、雨、月、星、雲の4つのグループのどこかに割り振られ胸にはるシールと、誰だかわからなくするための仮面を渡される。場内は私語厳禁。入場時からは仮面装着が必要。非日常感の演出はバッチリである。

プレミアムチケットの人が先に入場。一般チケットはその後に入場である。中は暗い。入って直ぐ沢山のモニターが壁にとりつけられた部屋にて映像を数分見せられる。ここで今回の寸劇の説明が手短に流れる。

北野天満宮で開催された秀吉の茶会。予想外の来場者で僅か1日で閉会となったあの茶会である。その幻の2日目を演出しているらしい。客がなぜか、豊臣秀吉、清少納言、紫式部、出雲阿国、土方歳三、菅原道真、藤原時平という設定。

更に中へ。プレミアムチケットの人は大広間の座布団に座らされる。一般チケットの人がその周囲に配置される。そこで劇団員数人の踊りを10分程度見せられた。部屋の飾りつけやライトによる演出は非日常で良かった。

そして身振り手振りで誘導され、各グループごとに移動させられる。

場内は、幾つかの小部屋にわかれていて各部屋数分間、その部屋にいる劇団員の踊りを見せられ次の部屋に移動させられる。体操をしてきた人たちなのはわかる。でも、その踊りや演技が期待値に遥かに届かなかった。言っちゃ悪いが誰でも出来る踊り、と私には思えた。しかもどの劇団員も大広間で披露したのと代わり映えの無い同じような踊りばかり。2部屋をまわる頃には疑問が浮上する。正直、意図が掴めなかった。

部屋の飾りつけは各部屋趣向が凝らされていてちょっと楽しい。演者の踊りや部屋誘導など全て要らないから、自由に各部屋まわらせてくれよ、それで終わりでいいじゃん、って思った。

狭い部屋に10人程の客を並ばせ期待していたレベルには届かない踊りを見せる。まるで演者が自分を見て欲しくて、自分に注目を集めたくてのこの企画なのか、と思ってしまったほど。文句を言わせないために私語禁止。演者の承認欲求を満たすための企画なのか??そういう印象を受けた 。不満と疑惑が炸裂。途中で私は和傘を少し持たせられたが、中には大きな箱を何度も運ばせられている客もいた。これが昨今聞く、体験型のショーなのか。それを体験できたのは良かった、と思うしかなかった。

豊臣秀吉、清少納言、紫式部、出雲阿国、土方歳三、菅原道真、藤原時平の各人の部屋で、演者がそれぞれの人物を表し踊る。各人物にはそれぞれテーマがある。傲慢、虚無、嫉妬、偽り、疑念、梅の祈り人、羞恥である。道真だけは特別扱いなのか梅の祈り人である。暗い部屋と残念過ぎる踊りと黒々しい設定感情。清少納言役の女性演者が筆をぶん投げたり頭を掻きむしったり、清少納言に失礼だろ!って思った。

最後には開場時に集まった大広間で、やはり代わり映えの無い稚拙な踊りを見せられ終了となった。写真や動画撮影は禁止だったが、出る時に画面がたくさん並んでいる部屋の写真だけは撮っていいよ、ってことで一応撮っておくかとカメラに収め、会場を後にした。これで1万円???

あまりにも満足度が低すぎた。せめて、暗くなれば梅苑のキラキラ綺麗になるのではないかと思い日が暮れるのを待った。空が晴れるとキラキラは少し綺麗になった。そして、暗くなるほど素敵になった、ような気がする。

場内は写真を撮る人だらけ。誰もが一様に必死になって写真を撮りまくっている。これは完璧インスタスポット。インスタに載せ好い評価をもらうために皆頑張っているんだなって笑える光景だった。私を誘った本人もついに本音を漏らした。「インスタ映えがなきゃここ来ないし」と。

しかしこんなに多くの人がインスタに同じような写真上げてもあまり意味がないような気がするのだが、とにかく今は、インスタ映え!をテーマにして催せば簡単に人が集まる時代なのだということがわかった。

あまりにも残念すぎた大打撃の感情が落ち着いた二週間後、知人に値段のわりに満足感がまるで得られない北野天満宮でのイベントについて話した。

「北野天満宮のせいではないんだけれど…北野天満宮はただそういう話がきて会場かしただけだと思う」と言ったのだが、言った相手が悪かった。

なんでもその知人が高校生の時、友人の友人が北野天満宮の息子と知り合いだったそうだ。それで、「北野天満宮の息子、受験落ちてたからあそこ御利益ないよ」と言われたそうだ。(個人的なエピソードとして聞いたが、真偽は不明 )彼女はそれがいまだによほどの衝撃なのだろう。受験落ちた、御利益ない、これを5回ほど繰り返して言っていた。それで今回の、完成度に疑問を感じまくったイベントの話。このコンボで知人は「北野天満宮=ショボい」と、脳内にインプットされた、と言っていた。なんとも世知辛い世の中である。笑

インスタ映えスポット!としておけば人が集まり金が入るのだからそれはいい。しかし、ああいった劇みたいなものは会場として使用許可する前に、なにをやるのか実際見てからOK出した方がいいと思った。神社の評価にまで影響してしまう。

しかしふと思った。以前から感じていた違和感。生活全体がインスタで評価を貰うために必死になって走り回っている人々がいる。なんでそんなに?インスタでの評価のために?と別世界の生物たちを見ているように感じていた。そっか、あのイマーシブシアターでの設定、傲慢、虚無、嫉妬、偽り、疑念、梅の祈り人、羞恥、これは、あの梅苑での状況にピッタリあっていると思った。インスタ映えの為に2,800円払い写真を撮りまくる。そんな社会を痛烈に皮肉っているのかもしれない。

もしかしたらこのイベント全体がそういった世の中をあざ笑う高度な皮肉の演出なのかもしれない、だからあえてあんな期待していたレベルには届かない踊りを披露したのだろうか。ショボい踊りに仮面装着、私語厳禁。中身がまるでない。インスタ映えのためだけに必死に演出する人々。やるなぁ北野天満宮、とニヒルな笑いがこぼれた。

まぁ私も梅苑で写真撮りまくったんですけれどね。


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