清納の滝にて

清納の滝にて

🦌 奈良県の史跡

今日も来てくれてありがとう!よければ一押しポチっと応援してってね〜。
人気ブログランキング ブログランキング・にほんブログ村へ

地元の人間が「幽霊滝」と呼ぶ場所が、十津川村にある。

理由は聞いた。水しぶきが霧のように立ち上り、人の形に見えるからだという。
ただ、その説明を聞いても、どうもしっくりこない。
名前だけが先に残って、意味が後からついてきたような違和感がある。

正式には「清納の滝」というらしい。

無料の駐車場に車を停めて歩き出すと、すぐに入口が見えてくる。
だが、道はロープで塞がれていた。

立ち入り禁止というより、これ以上は来るなと言われているような張り方だった。

ロープの脇から回り、真っすぐに進んだ。
道と呼ぶには曖昧で、少しでも気を抜けば斜面に落ちそうになる。

人の気配はまるで無い。


しばらく進むと、下へ降りる階段が現れる。
木々の隙間から、緑がかった水面が見えた。

異世界に紛れ込んだような感を覚える。怪しげに美しい。

音が少ない。

風もなく、葉もほとんど揺れない。
聞こえるのは、上から落ちてくる水の音だけだ。

その音だけが、妙に近い。


滝壺は、思っていたよりも静かだった。

水は澄んでいるのに、底の輪郭がはっきりしない。
浅いのか深いのか、見ているうちにわからなくなる。

魚影はない。
石の間をいくら探しても、何も動かない。

これだけ水があるのに、何もいない。

不自然なほどに。


頭上から、花びらが落ちてきた。

見上げると、桜が咲いている。
風はないのに、ひらひらと途切れずに降ってくる。

水面に触れた花びらは、流されずにその場に留まり、ゆっくりと沈んでいった。


この滝には、主がいるという話が残っている。
大きな蛇だと聞いた。

昔から、この場所はただの滝ではないと考えられてきたらしい。

そう言われると、納得できる気もする。
理由は説明できないが、長く居ていい場所ではないと感じる。


滝壺から少し下流へ歩いた。

岩の上に、何かがあった。

最初は、流木かと思った。

白い。
細い。
形がおかしい。

近づいて、それが骨だとわかる。

長さは三十センチほど。
片側が不自然に裂けていて、まだ赤いものが残っている。

すぐ横に、黒ずんだ塊が落ちていた。

よく見ると、腸だった。

水に触れていないのか、乾いていない。
ついさっきまでここにあったような、生々しさがある。


誰がやったのかは、考えなくてもわかる。

この辺りには、鹿もいるし、獣もいる。
それだけの話だ。

そう思うことはできる。

ただ、さっきからずっと、気配がない。

鳥の声も、風の音もない。

それでも、何かに見られている感じだけが消えない。


視線を感じて、思わず振り返った。

もちろん、誰もいない。

滝の音だけが、さっきよりも近くで響いている。


「清納の滝」は、落差十五メートルほどの小さな滝だ。

特別に派手な景観でもない。

それでも、あの場所の印象は、どうしても薄れない。

もう一度行くかと聞かれたら、少し考える。

たぶん、行ける。
ただ、同じ場所には長く立っていられない気がする。

Googleマップ:清納の滝
読んでくれてありがとう!面白かったら、下のボタンで応援してね。励みになります◎
「#歴史散歩」人気ブログランキング ブログランキング・にほんブログ村へ

清納の滝 の写真一覧

Tags:

Comments

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です