奈良・平城宮跡の北に広がる「歌姫町」。 この響き、なんだか雅で風流なイメージが浮かびませんか? 実はこの地、古代の墓や貴重な副葬品が見つかっていて、ただのロマンネームじゃありません。陶棺に収められた遺骨、金の装飾品、埴輪の破片……と、発掘された品々がこの土地の“格”を語っています。
そんな歴史の地にあるのが「歌姫近隣公園」。 見晴らしのいい高台にあり、静かで風が気持ちよくて、ご近所さんがのんびり散歩してるような場所……と思いきや、 ここ、けっこう“とんでもない背景”を背負った公園なんです。

まず、かつてこの地を通っていたのが「歌姫越え」「歌姫街道」。 これは、奈良と京都を結ぶメインストリートであり、壬申の乱では軍が通り、平城京の建設時には人・モノがひっきりなしに行き来した、いわば「古代版・名神高速」。
そして“歌姫”という地名。 平城京で歌や舞を披露した女官=雅な「歌姫」たちが関係している説が有名ですが、 記録によれば、「刑部(うたたべ)」という役職名が由来という説もあります。 でもやっぱり、響きが美しいのは女官たちの物語。 この地で舞い、歌った彼女たちの余韻が、今も名に残っていると思えば……ちょっと感慨深いですよね。

さて、現代の「歌姫近隣公園」。 穏やかな風景の中に、実は“働き詰めだった古代労働者たち”の気配がびっしり詰まっています。
園内にはふたつの重要な遺構、瓦を焼いていた窯跡が残っています。 ひとつは「音如ヶ瓦窯跡」。ここでは平城京の建設に必要な瓦を、何百万枚も焼いていたのです。 作業小屋まで発掘されていて、まさに“リアル古代工場”。 全国から集められた人々が、瓦づくりに追われた日々が目に浮かびます。


もうひとつは「歌姫西瓦窯跡」。こちらでは6基の平窯が発見され、同じく瓦生産の重要拠点だったことが分かっています。 あの奈良時代、ここには煙が立ちこめ、土と汗と火の匂いが充満していたのでしょう。
……それが今では、鳥がさえずる緑の散歩道。

小さな公園の中に、1000年分のギャップがぎゅっと詰まっているわけです。
園内には「ゴルフの練習等 危険な遊びをしないこと」という、ちょっと謎な注意看板もあって、 「誰や、ここでゴルフしようと思ったん」って思わず笑ってしまうユルさも。
広さはのんびり歩いて20分ほど。でも、この空間には瓦を焼いた人々の苦労、歌姫たちの声、 そして歴史を支えた“名もなき人々”の存在が確かに息づいています。

風が吹いたら、耳をすましてみてください。 それはきっと、彼らが遺した物語の、つづきの一節かもしれません。
歌姫近隣公園へのアクセスはこちらです。散策の途中に立ち寄れる静かな公園で、周辺には歴史的な見どころも点在しています。地図を参考に、ぜひ足を運んでみてください。

歴史の面影が残る落ち着いた場所で、ちょっとひと休み。
旅の合間に、歌姫近隣公園で静かな時間をお楽しみください。
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