JR加茂駅から北西へ徒歩10分。
木津川の左岸、河川敷の一角にものすごい勢いで生い茂る竹藪があります。
「うわっ、草ボーボー!」と思って通り過ぎた方、ちょっと待った。
実はここ、ただのジャングルではありません。
この地はかつて、あの**藤堂高虎(とうどうたかとら)**が治めていた領地の一部。
現在の三重県あたりから、なんとここ木津川まで、彼の担当エリアはかなり広大だったんです。
さすが、出世魚ならぬ“出世大名”高虎。
このあたり一帯は、過去に木津川の氾濫が繰り返された水害多発地帯。
そんな地に着任した高虎公は、「よし、ここに竹植えよ」と考えました。
そして植えたのがマダケ(真竹)。この竹は、しなやかで丈夫。
防風・防水効果が高く、まさに天然のダムの壁として大活躍した……はず、なんですけどね。
時は流れ、今ではすっかり人の手を離れ、竹も草も自由気ままに大暴れ。
その結果、「ちょっと入ってみようかな?」なんて考える余地すら与えない、超・密林地帯に進化してしまいました。

ちなみにマダケ、日本では最も多く見られる竹で、全国の竹の約6割を占めるとのこと。
用途は幅広く、茶道具から建材、果ては剣道の竹刀まで、まさに“万能竹”。
でもその強さと繁殖力が仇となり、**環境破壊の一因として「産業管理外来種」**にも指定されている、ちょっと複雑なポジションの植物です。
さて、そんなマダケオンリーで構成されるこの竹林、正式には**「御藪国有林(おやぶこくゆうりん)」と呼ばれています。なんと約4ヘクタール**(東京ドームで言うと0.85個分!)の広さ。もっと「ここ、国有林です!」って誇っても良さそうなもんだけど、今はただの――いや、自然の生命力が炸裂した、無法地帯のような大自然となってます。
ちなみに昭和45年頃から平成16年までは、東大寺の「お水取り」に使う松明用の竹材供給地でもありました。これ、ちょっといい話風だけど、今のボーボーっぷりを見ると、「今でも配ってくれよ」とツッコミたくなるレベル。なんで止めたん!?って思うほど、竹、元気すぎるんですけど。
そして現在、この一帯には立派な水門が整備され、藤堂高虎の竹林は、ついにお役御免となりました。

時の権力者の思惑で植えられ、
時代の流れで忘れられ、
気づけば竹たちだけが今も自由に生き続けている。
かつては災害を防ぐための最前線だった場所が、
いまや**「自然の野望」むき出しの聖域**と化しているのだから、人生、いや竹生(ちくせい?)わからないものですね。
次にあの藪の前を通るときは、ぜひこう思ってください。
「これが藤堂高虎の置き土産か……」と。
御藪って、どこにあるの?──そんな素朴な疑問にお応えして、地図を添えました。気軽に歩いて行ける場所です。

ほんの少しの寄り道が、記憶に残る旅になりますように。
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