吉祥草寺ー修験道の開祖・役行者 生誕地

吉祥草寺ー修験道の開祖・役行者 生誕地

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役行者のふるさとで、石と対話してみた。

奈良県御所市。茅原(ちはら)という地名に、どこか懐かしさを感じたのは偶然ではないかもしれない。ここ吉祥草寺(きっしょうそうじ)は、修験道の開祖・役行者(えんのぎょうじゃ)こと役小角(えんのおづぬ)の生誕地とされる、ちょっと特別な場所だ。

この寺に初めて足を運んだ日、私は周囲の山々にぐるりと囲まれた地形にしばし息を呑んだ。目の前に広がる金剛山と葛城山――まさに、役行者が修行を重ねた聖地そのものが目の前にある。この風景を見て育った彼が、山へと向かう人生を選んだのも自然なことだったのかもしれない。

けれども、「山に籠って修行」って軽々しく言うけれど、夜中に一人で山登りとか、熊もいるだろし、そらもう怖いって。精神力どんだけ…。

さて、境内を歩くと「百度石(ひゃくどいし)」という石がある。願いごとを心に抱いてこの石の間を百回往復するという、まさに願掛けの筋トレ。軽く走って百回ダッシュでも効果あるのか?とか、つい現代的なアレンジを想像してしまう。

ふと足元を見ると、「成就石」という大きな岩が。願いごとを唱えながら額を石にぴったりつけて祈るのだとか。「古来より多くの願いを叶えた石」だそうで、触れるだけでありがたみがじんわり。なんでもこれは、役行者が法華経の第一経塚を築いたという友ヶ島の霊石を移したものらしい。そんな由緒あるものが、まさかこの距離感で拝めるとは!

そして私が密かに一番楽しみにしていたのが――役行者が自らの手で彫ったという、自作の木像。これがまためちゃくちゃ上手い。仏師顔負けの完成度で、これで飯食えるやん?というレベル。残念ながら安置されていた祖師堂は老朽化で取り壊されたらしく、現在は隣の新しい堂宇に安置されているとのこと。それでも、しっかり無料で見られるという太っ腹ぶりには感謝しかない。

さらに驚いたのが、世界初(!?)の「公式・信仰対象の萌えキャラ」がいるという事実。役小角の子孫を名乗る二人のキャラ「役小角奈」と「役追儺(やくついな)」が、なんと不動明王の元で修行を積み、菩薩に昇格したらしい。萌えと仏教がここまで融合する日が来るとは…。その隣には、ドデカい法螺貝も。撫でると健康運が上がるらしいけど、重くて鳴らせる自信はゼロ。

そしてもう一つ見逃せないのが、「産湯の井戸」や「腰掛け石」。634年の誕生の際に使われたという産湯の井戸には、今も水が湧いているという。腰掛け石には「どうぞ座ってください」との案内。恐れ多くも、そっと腰を下ろしてみたら……不思議と時間がゆっくり流れていく気がした。しばし、修験道の始まりに思いを馳せた。

この寺は、かつては49の塔頭(子寺)が立ち並び、歴代天皇の祈願所として隆盛を誇ったという。今はこぢんまりとした風情だけれど、その静けさの中に、確かに息づいているものがある。役行者が見つめていたであろう風景と、そこにこめた願い。ほんの少し、その気配にふれた気がした。


吉祥草寺と役行者:修験のふるさと

吉祥草寺(奈良県御所市茅原)は、修験道の祖・役行者(役小角)の生誕地と伝わる真言宗系寺院である。創建は第34代舒明天皇(在位:629〜641年)とされ、役小角による開基と伝えられている。

この地は、東西約4km、南北約5kmの広大な境内を有し、かつては49の子院を抱える一大宗教都市であった。役行者の名にちなんで「茅原寺(ちはらでら)」とも呼ばれ、歴代天皇の祈願所として隆盛を極めた。

しかし、寺の歴史は波瀾に満ちている。670年と1349年の二度にわたる火災により大きな被害を受け、とくに後者は南北朝期の兵火による伽藍焼失を招いた。現在の本堂は室町時代の1396年に再建されたもので、本尊・五大明王が安置されている。

役行者にまつわる伝説は枚挙にいとまがない。出生については諸説あり、「平群真鳥の子孫」「出雲の加茂氏の子」「謀反人の子」などとされるが、『役君微業録』には、舒明天皇と一夜の契りを持った女性から生まれたとする説も紹介されている。神秘的な誕生譚とともに、幼少期から梵字を記し、法を学び、吉祥草(きっしょうそう)という草で庵を結んで寺の名としたという逸話が残る。

彼は13歳で毎晩葛城山に登って修行し、14歳で「空の理」を悟り、19歳には金峯山で修行、30歳で孔雀明王の呪法を体得したという。32歳で葛城山に籠る決意を母に告げ、母のために自作の木像を遺して旅立ったとされる。

吉祥草寺には、その自作像が今も安置されており、信仰の対象となっている。加えて、役行者が法華経28品を全国28か所に埋納したという伝説があり、その第一経塚にあたる友ヶ島の「成就石」の霊石も境内に祀られている。

なお、近年では新たな試みとして「役小角奈」「役追儺」という二人の萌えキャラが仏教的信仰対象として登場し、聖護院門跡の山伏により正式な「入魂の儀」が執り行われた。古の修験道と現代カルチャーとの融合が、この地に新たな信仰の息吹をもたらしている。


吉祥草寺へのアクセスはこちらの地図をご参照ください。歴史と信仰が息づくこの地を、ぜひあなたの足で訪れてみてください。

Googleマップ:茅原山 金剛寿院 吉祥草寺

山の静けさと、現代との意外な出会いが待っている場所――吉祥草寺で、悠久の時にふれてみませんか。


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