上狛環濠集落跡:迷路のような村に刻まれた“城”と“共生”の記憶

上狛環濠集落跡:迷路のような村に刻まれた“城”と“共生”の記憶

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JR上狛駅の西側に広がる「大里(おおさと)」と呼ばれる一角。ここが、かつて東西約330m、南北約360mのスケールを誇った、巨大な環濠集落「上狛環濠集落跡」だ。

その四方を囲むのは、深い水堀と高い土塁。中世の混乱のなか、人々は「守り」と「暮らし」を同時に成立させる術として、この小さな城郭都市を築き上げた。


■ 古代から続く条里の地に、渡来系の地名と一族が根を張る

この地の起源は古代の条里制にさかのぼる。そして集落の中心「大里」は、興福寺領狛野荘・南之荘の中核であった。

15世紀前半には、狛氏が下司職として居館(狛城)を構え、同時に環濠も形成されたとみられる。

「狛」という地名は、7世紀初頭に創建された高麗寺に由来し、狛氏も朝鮮半島からの渡来系氏族「狛宿禰(こまのすくね)」の後裔とされる。

歴史の交差点のような土地に築かれた集落。それが、この上狛だった。

上狛環濠集落

■ 奈良街道の真ん中で、暮らしと防衛が共存した場所

中世の大動脈・奈良街道が集落の中心を貫き、戦略上の要衝であると同時に経済の通り道でもあった。

「大里」では、村と田畑を堀で区切り、土塁の内側には竹藪や雑木林が生い茂る。

その中に家々がぽつぽつと立ち並び、人々は「郷」や「垣内」と呼ばれる小さな集団で暮らし、協力し合って生活していた。


■ 狛どんと浦の川:暮らしの中のヒーローと堀

城主・狛山城守秀――通称「狛どん」。地元では親しみを込めてそう呼ばれ、普段は農業に従事しながらも、公正な統治で人々に慕われていた。

堀は「浦の川」と呼ばれ、幅はなんと5.4メートル。現代で言えばボートレースができるレベル。

今は舗装道路に変わってしまったが、集落の一部にその静かな名残が今も残る。

上狛郷絵図(浅田家文書)- 江戸時代-

■ 小さな都市国家:自治の場としての環濠内

この集落は、ただの城の防衛施設ではなく、小さな「自治都市」だった。

名主、百姓、職人、商人……身分を越えて人々が議論し、共同で物事を決める場だった。

山城郷土資料館の2024年秋〜冬の特別展「南山城の戦国時代」では、その様子を描いた復元図も公開されていた。

江戸時代の絵図には、出入口に屋根付きの門が8つ。夜には閉門し、村人が交替で番をしていた。自治のための守りだった。

南山城資料館:上狛環濠集落と狛氏の居館(想像図)-大西勇(画)-

■ タイムスリップ気分と、現代の神業ドライバー

現地を歩くと、その雰囲気は「中世の迷路」そのもの。

道幅は車1台がギリギリ通れるほどの狭さ。古い家が並び、竹や木々に囲まれ、時間が止まったかのような景色が広がる。

そして、そんな路地をスレスレで通り抜ける車たち。電柱には過去の“接触事故”の痕が残り、運転手の妙技に思わず拍手したくなる。

上狛環濠集落

■ 応仁の乱と山城国一揆:戦乱から生まれた自治のかた

応仁の乱では狛秀盛が東軍方につき、村は焼かれ、国人も農民も疲弊。

文明17年(1485)、狛秀盛らは宇治の平等院に集結。南山城の国人・百姓たちと共に「国中掟法」を制定し、畠山両軍を排除、三十六人衆による自治を宣言。

これが、後に“山城国一揆”と呼ばれる惣国一揆の始まりであり、惣国体制は約8年にわたり続いた。

やがて国人と農民の間に軋轢が生まれ、明応2年(1493)、細川政元の政変などを背景に一揆は解体。

だが狛氏は、その後も在地領主としてしぶとく生き延びた。


◎ 最後に

上狛環濠集落跡は、ただの古地図上の点ではない。

そこには、戦いのなかで立ち上がり、共に暮らし、自治を実現しようとした人々の息づかいが、今なお道の細部や堀の跡に残されている。

歩けばきっと、どこかで「狛どん」の声が聞こえる。そんな場所だ。

実際にその空気を感じてみたくなった方のために、地図をご用意しました。

Googleマップ:環濠集落

道の狭さ、堀の名残、そして“中世の空気”がどこに残っているのか――訪れる前の予習や、歩きながらの確認にぜひご活用ください。

では、現地で会いましょう。


この環濠集落のような防御構造をもった村々が、後の時代に「自分たちで国を守る」という動きを生み出す。そう、それが“山城国一揆”である。
👉農民と武士がガチで国を治めた!? 山城国一揆とは


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