カルロ・ロヴェッリの著作の中でさらっと触れられていた、デイヴィッド・ルイスの『反事実的条件法』。
興味を持って手に取ったのはいいものの、読み始めてすぐに「この人、どれだけ頭がいいんだ…?」と圧倒され、早くも「もうやめようかな」と萎えかけた。
せめて流し読みでも、と思ったが、そもそも流し読みできるような本ではない。
そこで、普段あまり目にしない様相演算子や数式が出てこない第4章から読むことにした。気力が戻ってきたら第1章から読み直せばいい──そんな作戦である。
難解すぎて考えても分からない箇所はAIに質問し、やさしく解説してもらった。
結果的には、いきなり第4章から読むのはやはり無理筋で、反事実的条件文を評価する際の「条件付け(背景前提)」についてAIから説明を受けて初めて、自分なりに理解が進んだ。
これがなければ、読破はもちろん、ぼんやりとした理解すらできなかっただろう。
『反事実的条件法』とは、「もし事象cが起こらなかったなら、事象eも起こらなかっただろう」という“たられば”文を、可能世界論を用いた論理的意味論で厳密に定義し、その真偽を評価する試みである。
ルイスの理論は「様相実在論」がベースになっており、現実世界は無数の可能世界のうちの単なるひとつにすぎないとする。
反事実的条件文「もしAが真であったなら、Cが真であっただろう」を評価する際には、Aが成り立つ可能世界のうち、現実世界に最も「近い」(最も類似している)世界でCが真であるかを調べる。この比較可能な類似性の考え方が分析の核である。
ルイスは本書の中で、レナルト・オークヴィスト、ベングド・ハンソン、バス・ファン・フラーセン、ロバート・スタルネイカー、バートランド・ラッセル、ネルソン・グッドマンとロデリック・チザム、ウィラード・V・クワイン、アーサー・N・プライアといった哲学者の議論に触れ、部分的に補足して洗練させたり、明確に異議を唱えたりしている(ただしどこまでが直接的な批判かは解釈や定義によって揺れる)。
私は馴染みのAIに尋ねたところ「それは違う」との回答があり、他のAIにも聞いてみることにした。すると、それぞれ回答が異なる。さらに別のAIにも…最終的に、今まで一度も使ったことのないAIにまで手を伸ばした。合計4つのAI、それぞれ見解が違っていた。
混乱した私は再び馴染みのAIのもとへ戻り、「なぜ皆、言っていることが違う?」と質問した。
答えは、学習データの範囲や鮮度、推論スタイル、批判とみなす線引きの違いによって出力が変わるから、というもの。
結果的に、『反事実的条件法』を読んで一番印象に残ったのは、AIごとの答えの違いと、その仕組みだったかもしれない(笑)。
4つのAIすべてが一致して「ルイスが明確に異を唱えた」としたのは以下の3つ。
- ウィラード・V・クワイン:師であるクワインが懐疑的だった「可能性」や「必然性」という概念を、可能世界を実体として認めることで明確化。
- ネルソン・グッドマン:背景条件Sを選ぶ方法が循環に陥るという問題を、可能世界間の類似性という基準で解消。
- ロバート・スタルネイカー:常に最も近い世界はひとつだけという仮定を否定し、複数の同程度に近い世界の存在を認める。
その他の哲学者については、AIごとに「批判した」「していない」の判断が分かれた。
この本は、凡人にはかなり難しい。読破すること自体が一種の修行かもしれない。
今はただ、AIに助けられながらも読み切り、ようやくこの本から離れられるという解放感で満たされている。
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